地球生活

この物語はフィクションです。

2021.06.28 クマの夢の話

 

 

「なんのオチもない意味不明な夢の話してくる女って本当しょーもないよな」「リアクションに困る」

 

過去に半笑いでそう言ってきた男がいた。

その時は「世界一しょうもないのはお前だ」と思いながら適当に流したけれど、わたしの頭の中に「夢の話をする女はしょうもない」という小さな呪いが刷り込まれてしまった。わたしは頭を空っぽにして、オチのない夢の話を他人にすることが怖くなった。

でもこのブログは「よーし、しょうもない話するぞ!」と意気込んで書いているので、ここではしょうもない話し放題なのです。天才。

しょうもない話は、それができる心を許した相手にしかできないことなのに、それをただ「しょうもない」と一蹴してしまうなんて、人生を楽しむのが下手ね、と今ならあいつに言えるのに。

 

 

 

昼寝から目を覚ますと、いつもいるはずの飼い猫がおらず、代わりに小さな子熊がいた。

子熊と言っても猫よりかなり大きい。

「なんで!?」と飛び起きると子熊はなんの警戒心もなくこちらへやってきて、わたしの手に鼻を近づけた。少し湿っていて冷たいこの感触、猫も犬も熊も同じなんだな、と妙に冷静になったが、窓の外から聞こえる騒がしい声に、はっと現実へ引き戻された。

「クマがいる!でかいぞ!」「ベランダよじ登ってる!」「親子だ!」

きょとんとしている子熊をよそにベッドから飛び降り窓を開けると、道沿いに人々が集まってこちらを見ている。

小さな熊が後ろ足をぶらぶらさせながらベランダをよじ登っ、?落ちかけ?ていた。それを2mはあろう母熊が、道路を挟んだ向こう側でうろうろしながら見ていた。

「なんで!?!?」

なぜわたしの部屋に子熊がいて、それを追いかけるかのようにおそらく兄弟熊がもう1匹、こちらへこようとよじ登っているのか。大体この南の島には熊は生息していない。何熊なんだ。

わたしの熊に対する知識は名探偵コナン単行本27巻-28巻の松茸狩りのやつ(子熊を匿う灰原さんかわいい)しかない。

その乏しい知識から脳内でコナンくんが「子熊を放せ!母熊に返すんだ!」って叫ぶものだから、やべえ早く返さないと興奮した母熊が人間を襲っちまう!と焦り、ベランダで落ちかけていた子熊に近づき、下にいたおじさんに「子熊落とすんで、受け取って母熊に渡して!」と叫んだ。

 

 

 

と、ここで夢は途切れた。

オチはない。夢なので。

 

 

夢というのは、パラレルワールドの記憶を断片的に覗きみることだと思っている。

無数に存在する並行世界のわたしがその記憶を共有することで、それぞれの世界では「ありえない」とされている非現実的なアイデアや、ひらめきや逃避や安心や、その世界を生き抜くための、小さな救済だと。

科学的な根拠なんか必要ないのだ。

自分の世界は自分にだけ都合の良い解釈をしていい。

オチや理屈や理論に疲れたら、ただ眠ればいい。現実は脳みそを使いすぎる。

 

おやすみなさい

 

 

 

おわり